この記事は、私自身の乳がん治療・術後の経験に基づいて書いています。 術後の朝、胸のつっぱりや腕の重さで「今日もまた、この体と向き合うのか…」と感じていた時期、私自身がどのように向き合い、小さなヒントを見つけてきたのかをお伝えします。

元フィットネストレーナーとして15年間体と向き合ってきた経験、 ピンクリボンアドバイザーとしての専門知識、 そしてサバイバーとしての実体験を掛け合わせ、 術後1ヶ月から無理なく続けられる“布団で5分の目覚めリハビリ” をまとめました。

同じ悩みを抱えるあなたの朝が、少しでも軽くなりますように。


はじめに:体と心が重い朝を過ごしているあなたへ

乳がんの手術を経験され、日々ご自身の体と向き合っている皆さま、本当にお疲れ様です。

朝、目が覚めた瞬間に感じる「重さ」と「不安」

手術から数日の方も、数ヶ月、あるいは数年が経過した方が、朝目が覚めた瞬間に胸のつっぱり感や腕の重さを感じて、「今日もまた、この体と付き合っていかなきゃ……」と、心が少し重くなってしまうことはありませんか?

術後1ヶ月から始めた、私なりの「リハビリへの向き合い方」

私自身も同じ道を歩むサバイバーの一人です。術後1ヶ月程度は、病院の資料を手に毎日コツコツと「基本のリハビリ」に励んでいました。可動域を取り戻すために基本を守ることは、回復への何よりの近道です。

トレーナーの知見を活かした「プラスアルファの運動」

傷口の状態が安定し、日常生活以上の活動へと移行する「回復期」にあたる術後1ヶ月が経つ頃。病院の指導を大切に継続しつつ、15年のフィットネストレーナーとしての知識を活かして、今の自分に最も心地よい**「プラスアルファの運動」**を組み合わせるようになりました。

今回は、私が今でも毎朝欠かさず行っている、布団の中で完結する「目覚めのリハビリ習慣」をご紹介します。

布団で完結!元トレーナーが実践する「目覚めのリハビリ」4ステップ

本格的な可動域訓練を始める前に、まずは寝たまま血流と筋肉を優しく呼び起こしていきましょう。

ここからはイラストとともに説明していきます。

STEP 1:末端から血流を呼び戻す(手首・足首回し)

STEP 1:末端から血流を呼び戻す(手首・足首回し)
布団の中で、てくびと足首をゆっくりと円をえがくようにまわします。(各10回を目安にします。)※痛みがあるときは中止します。
基本の姿勢
膝を90度に曲げ、脚を立てた状態で体を安定させます。腰とお布団の間に隙間をつくらないようにするのがぽいんとです。
  • やり方: 布団の中で、手首と足首をゆっくりと円を描くように回します。
  • ポイント: 術後のむくみ対策にも効果的です。終わったら両膝を90度に立てて腰を安定させましょう。

STEP 2:肩甲骨を外側へ引き出す(天井へのリーチ)

STEP 2:肩甲骨を外側へ引き出す(天井へのリーチ)
天井の方へ手を上げ、「前へならえ」をします。このとき、腰が反りやすいので、腰とお布団の間に隙間をつくらないようにするのがポイントです。「前へならえ」の状態から、息をはきながら、指先で天井を押し上げるように腕を上方へのばします。息を吸って最初の「前へならえ」の状態に戻します。(10回を目安にします。)※痛みがあるときは中止します。
  • やり方: 「前へならえ」の形から、指先で天井を押し上げるように腕を上方へ伸ばします。
  • ポイント: 肩甲骨が布団から離れ、外側に開いていく意識で行います。

STEP 3:肩周りを「面」でゆるめる(交互にバンザイ)

STEP 3:肩周りを「面」でゆるめる(交互にバンザイ)
「前へならえ」の状態から、片手ずつ交互にゆっくりと頭の方へ動かします。(左右10回ずつが目安)※痛みがあるときは中止します。息を吐きながら左腕を頭の方へ上げ、息をすいながら戻します。右側も同様に行います。(痛いところまで上げる必要はありません。痛くないところまで腕を上げられれば十分です。
  • やり方: 「前へならえ」の状態から、片手ずつ交互にゆっくりと頭の方へ動かします。
  • ポイント: 片手ずつ行うことで、体のねじれを防ぎ、丁寧に筋肉を伸ばせます。

STEP 4:内側からスイッチを入れる(ドローイング)

STEP 4:内側からスイッチを入れる(ドローイング)
基本の姿勢から息を吐きながら、おへそを背中にくっつけるイメージで凹ませます。(心の中で10を数えたら緩めます。)
※息を止めないことがポイントです。
sana'sポイント!
最初からたくさん行う必要はありません。ご自身のペースで、できる範囲から始め、慣れてきたら、回数を増やしてみてください。「疲れていたり、下見があるときは、休む。」これが継続の秘訣です。
  • やり方: 息を吐きながらおへそを背中にくっつけるイメージで凹ませます。その状態をキープしながら、ゆっくり呼吸を続けましょう。
  • ポイント: **「息を止めないこと」**が最大のコツ。体幹筋肉が刺激され、活動モードのスイッチが入ります。

なぜ「動かすこと」が大切なの?医学的根拠と安心の理由

「動かしすぎてリンパ浮腫が悪化したらどうしよう」と不安になる方も多いですよね。しかし、専門機関のデータでは運動のメリットが明確に示されています。

リンパ浮腫への安心感 「適切な負荷の有酸素運動や抵抗運動(筋力トレーニング)は,リンパ浮腫の発症率を高めることはなく,むしろリンパ浮腫の症状の改善や体力の向上に寄与する」 (出典:日本乳癌学会「患者さんのための乳癌診療ガイドライン 2023年版」)

将来の安心に繋がる数字 「診断後に身体活動(週に速歩を3時間程度以上など)を積極的に行っている人では、行わない人と比較して、乳がんによる死亡リスクが約40%減少するという報告があります」 (出典:国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 療養」

運動開始時期の目安 一般的に術後4週(約1ヶ月)以降は「回復期」とされ、傷口の状態が安定し、日常生活以上の活動へ徐々に移行していく時期とされています。 (出典:各種医療機関のリハビリテーション指針より)

運動は可動域を広げるだけでなく、生活の質(QOL)を高め、私たちの未来を守るための大切なステップなのです。

患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版の本の写真
私が乳がんの告知を受けた時に、主治医から「読んでおくといいよ。」と勧められた書籍です。

運動の後は、心と体を緩める「白湯(さゆ)」の魔法

布団から出たら、まずは洗面所へ。寝起きの口内をうがいや歯磨きで清潔にするのが、免疫力を大切にしたい私のルーティンです。

私のこだわり「じんわり温かい」白湯の作り方

その後、やかんのお湯と水を半分ずつ合わせ、**両手でマグカップを包んだ時にじんわり温かいと感じる程度(約50度)**の白湯を飲みます。熱すぎず、体が優しく受け入れられる温度を大切にしています。

白湯がもたらす「3つのセルフケア効果」

  1. 巡りのサポート: 寝ている間に失われた水分を補い、血流をスムーズにします。
  2. 代謝のスイッチ: 内臓を温めることで、術後の体重管理を優しく支えます。
  3. 心のデトックス: 湯気を感じる時間は、不安な心を解きほぐしてくれます。

「午後のリラックスについてはこちら」
乳がんホルモン治療(タモキシフェン)の副作用・抑うつを乗り越える。一杯のハーブティーで心を整える対処法


おわりに:少しずつ、新しい自分と仲良くなる

乳がんとわかり、告知を受け、手術や治療の長い道のりの途中で、 体や心の変化についていけない日があるのは、とても自然なことです。

「昨日までの自分」と「今日の自分」が違って見えて、 戸惑ったり、落ち込んだりする瞬間もあると思います。

でも、 新しい自分を少しずつ受け入れていくことも、回復の大切な一歩。

リハビリは「新しい自分を愛していくための準備」

リハビリは、失ったものを取り戻す「訓練」ではなく、**「新しい自分を愛していくための準備」**です。焦らず、一歩ずつ。明日の朝も、あなたが自分自身の体に優しく寄り添えますように。

最後までお読みいただきありがとうございます。

【ご案内】 当ブログでご紹介している健康・運動情報は、私自身の体験と専門知識に基づくものですが、効果や経過には個人差があります。実践される際は、必ず主治医にご相談ください。

体温調節の難しさに戸惑った時の体験もこちらにまとめました。
🔗 ホルモン療法中の“暑さと冷え”の矛盾に向き合う。元トレーナーの私が守った体のケア


執筆者プロフィール

元フィットネストレーナー × ピンクリボンアドバイザー × 乳がんサバイバー sana


フィットネストレーナーとして15年間、延べ数千人のお客様の体と向き合ってきた経験に加え、 現在はピンクリボンアドバイザーとしての専門知識を活かし、 乳がんサバイバーとして「今の自分に本当に必要なケア」を発信しています。

体が変われば、心も前を向ける。 失ったものを嘆くのではなく、 新しい自分を愛していくお手伝いができれば幸いです。

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